設置事例など

学校関連

小学生から救急救命を体験する大切さ

今回の「聞いてみよう」でおじゃましたのは、神奈川県・平塚市立松延小学校。昨年の葉山町立上山口小学校のように、今年も県によるAEDのクリアファイル贈呈式と、オムロン&救急救命士によるAED講習が行われました。

恥ずかしがりながらも、先生を助けるため一生懸命!

ぜひ覚えておいてほしいこと、それは……

児童代表にクリアファイルを贈呈する足立原課長のイメージ

神奈川県健康医療局 保健医療部 医療課 足立原課長から、児童代表にクリアファイルが贈呈された

昨年に引き続き、オムロン ヘルスケアが神奈川県の小学校にクリアファイルを贈呈するということで、取材にやってきました。伺ったのは、神奈川県の平塚市。平塚駅から車で20分ほどの閑静な住宅街のなかにある平塚市立松延小学校です。贈呈式のあとには、救急救命講習も開催されます。

松延小学校にも、もちろんAEDは設置済み。住宅に囲まれた立地ですが、これだけたくさんの人が住んでいる地域ですから、学校にAEDが設置されていることを知っていれば、いざというとき役に立つかもしれませんね。皆さんはAEDが近所のどこに設置されているか知っていますか? まずは身近な設置場所を確認することから始めてみましょう。

体育館で贈呈式と講習会の準備を整えていると、児童が元気に入ってきました。今回は4年生の3クラスが対象です。はじめに、神奈川県健康医療局 保健医療部 医療課の足立原課長から児童代表にクリアファイルが贈呈されました。その後、「AEDに触れるという機会はなかなかないと思うので、しっかり覚えて帰ってください」とのお言葉をいただきました。

AED事業部 岩田部長のイメージ

AED事業部の岩田部長のお願いを児童は真剣に聞いていた

続いて、オムロン ヘルスケアAED事業部の岩田部長から「今日一日でいろいろ覚えるのは大変だから、今日はひとつだけ覚えて帰ってください。講習を受けて家に帰ったら、家の近くでAEDがどこにあるか、ぜひ探してみましょう。もし誰かが倒れたときに、『知ってるよ』というだけで、多くの命を救えることになります」とお願いをしました。ご家族みんなでチェックしておくと安心ですね。

小児用AEDは何歳まで使えるの?

元気よく手をあげる児童たちのイメージ

「小児用を使うと思う人」の声に元気よく手をあげる児童たち

真剣に目をとおすイメージ

配られた「今日覚えてほしいこと」に真剣に目をとおす

さあ、そしていよいよ救急救命講習の始まりです。まずはじめに、インストラクターが児童に質問します。「AEDのパッドには小児用、成人用がありますが、小学校4年生のお友達が倒れたらどちらを使うでしょう?」さて、皆さんはおわかりですか? 小学校4年生くらいだと、世間一般にはいわゆる「子ども」ですから、小児用を使いそうですね。児童も「小児用」に手をあげた子たちが大半でした。ところが、実は成人用を使うんです! AEDの小児用パッドを使うのは未就学児(およそ6歳)まで。それ以上、つまり小学生では成人用を使うこととなっています。AEDの小児用パッドは電気ショックのエネルギーを抑えており、小学生では電気ショック効果が不十分となるおそれがあるのです。しかし、緊急時に成人用しかない場合は、6歳以下でも成人用を使っていいと、ガイドラインには記載されています。これは意外と知られていない事実ですから、インストラクターも「まだまだこの事実を知らない人がたくさんいます。ぜひ、お父さんお母さんに伝えてください」と訴えます。

心電図計測と電気ショック時は傷病者に触れないように注意するイメージ

心電図計測と電気ショック時は傷病者に触れないように注意する

「助けてくださーい!」と元気に手を振って助けを呼ぶ児童たちのイメージ

「助けてくださーい!」と元気に手を振って助けを呼ぶ児童たち

続いて、今日覚えてほしいことなどを、配られたプリントで確認したら、いよいよ救急救命体験がスタート! まずは、いつものようにひととおり救命の流れをインストラクターが実演しながら説明します。

  1. 周囲の安全を確認
  2. 近づいて反応の確認
  3. 周りの人に119番通報の要請、AEDの要請、応援の要請
  4. 呼吸の確認
  5. すぐに胸骨圧迫を開始
  6. AEDが到着したらすぐに装着し、心電図を測る(自動)
  7. 必要に応じて(AEDが判断)電気ショック
  8. 胸骨圧迫を続ける
  9. 救急隊が到着したら、状況を伝えて引き渡す

こうして見てみると、することがいっぱい。児童たちはうまくできるでしょうか? これだけを目にすると、大人でも難しそうですね。AEDは電源を入れたあとは音声ガイダンスに従って操作するだけなので、迷うことはないのですが、救命の一連の流れがわかっていないとアタフタしてしまいそうです。そういった意味でも、このように小さい頃から体験して慣れておくことが重要といえるでしょう。そこで、児童といっしょに声を出しながら救命の一連の流れを復習します。みんな元気に「大丈夫ですか!」「誰か助けてくださーい!」と声が出ています。うん、これなら大丈夫そう。

校長先生も必死の胸骨圧迫!

倒れたフリをする先生と喜ぶ児童のイメージ

「先生が倒れた!」で倒れたフリをする伊藤先生。児童は大喜び

配られた「今日覚えてほしいこと」に真剣に目をとおす児童たちのイメージ

救急救命士役は、神奈川県の高校勤務の救急救命士である田中さん(右)と、神奈川県くらし安全防災局の伊東さん(左)

さあ、救命の流れを頭に入れたら、今度は児童代表の3人ずつ3組が体験します。いつものように先生が倒れたという設定にすると児童は大盛り上がり。まず最初に倒れた(ことにされた)のは安藤先生。恥ずかしさもあり、最初は笑っていた児童たちも、だんだん真剣な表情に変わります。最後の胸骨圧迫までくると、「ピーポーパーポー」と救急救命士の田中さんが声のサイレンとともにやってきます。救急隊の到着です。田中さんがすぐに胸骨圧迫を代わり、児童に確認します。
「この方とどんなご関係ですか?」
「倒れたところを見ましたか?」
「持病はありますか?」
「どんな処置をしましたか?」
「電気ショックは何回やりましたか?」
すべての質問に児童は的確に答えていきます。さすがですね。

続く2組目。今度は伊藤先生のクラスです。「伊藤先生が校庭を歩いていて鉄棒にぶつかって倒れた!」ということで、救助が始まります。今度は119番に電話して救急車を呼ぶところも練習します。2組目ということもあってか、児童はとても冷静。大人のような落ち着きっぷりが逆に笑いを誘います。
それを見ていた伊藤先生は、「緊迫感がないな~」と笑ってらっしゃいました。先生はご自分を助ける児童にもっと慌ててほしかったのかもしれませんが、ほとんどの人が実際の救急現場では慌ててしまうものです。ですから、現場では冷静でいることが大切。練習段階で慌ててしまっていては本番も心配でしょう。そういう意味では、児童の冷静な対応は素晴らしかったのではないでしょうか。伊藤先生、大丈夫です。いざというときもきっと助けてもらえますよ。

校長先生の鬼気迫る胸骨圧迫のイメージ

「鈴木先生~!」と叫ぶ校長先生の鬼気迫る胸骨圧迫で無事呼吸は回復!

最後の3組目。今度は鈴木先生が倒れてしまいました。助けを呼んでやってきた大人は、なんと校長先生! 素早く駆け寄ると「鈴木先生! 死なないで! 赴任してきたばかりなのに!」と迫真の演技で大盛り上がり! 大切な先生を死なせたくない想いが伝わってくるような鬼気迫る実演でした。眺めていた鈴木先生ご本人もさぞ感動したことでしょう。こちらに伺って感じたのは、校長先生をはじめ、先生方と児童の仲の良さ。とくにクラス担任の先生方は、お兄さん、お姉さんという感じで慕われていたのが印象的でした。
さあ、その鈴木先生(の代わりの人形)が胸骨圧迫を嫌がる動作をしたみたいですよ! 意識が回復したのかもしれません。そんなときは呼吸の確認です。おなかに手を当て、6秒間でおなかの上下動を見て確認します。よかった、呼吸があったようです! でもまだ安心できません。意識はあるでしょうか? 両肩をバンバンとだんだん強くたたいていきます。両肩をたたくのは、半身が麻痺していてもどちらかで感じられるように。だんだん強くするのは、意識はあっても、けがをしてすぐに動けないことなどを配慮して。チェックの結果、残念なことに意識は戻っていないようでした。そんなときは、傷病者の体を横にする「回復体位」をとりましょう。のちほど「ここにも注目!」で詳しく説明しますが、これは、嘔吐物で窒息を防ぐための処置です。回復体位になったところで、救急車が到着。無事に病院へ搬送されました。

真剣な先生のイメージ

大事な生徒を守るため、先生方も真剣!

皆さん立派に救急救命を終えたところで、最後にインストラクターが質問します。「皆さん、お片づけは苦手?」すると、大きな声で「苦手ー!」と返ってきました。
それに対してインストラクターは、「実は、AEDは『お片づけをしない』(AEDのパッドを外さない、電源は切らない)のが正しいんです」と言います。なぜなら、今の時点で電気ショックが不要という判断でも、救急車が到着するまでに電気ショックが必要な状態になってしまうかもしれません。それでも、AEDは2分ごとに心電図を測り、電気ショックが必要かどうかを判断してくれます。だから、倒れている人にはすぐAEDのパッドを貼る、AEDはつけたままにしておく必要がある、というわけです。「救急隊に任せるまでAEDはつけたままにしておいてください。救急救命はお片づけが苦手なほうがいいのかもしれないね」ということで、救命体験は終了です。

最後に神奈川県の職員さんからAEDについての説明がありました。
神奈川県には、すでにAEDが1万8000台も設置されていて、東京都に次ぐ全国2番目の台数だそうです。松延小学校のような学校だけでなく、デパート、交番などにも設置されています。交番などは24時間使えるものもありますが、学校やデパートのように夜入れない場所だとAEDを持ってこられません。そのあたりのことも含めて、自分のお家の周りでどこにAEDがあるかを知っておいてほしいとのことでした。
では、どうやってAEDを探すかということですが、今はネットで設置場所を検索できる仕組みが用意されています。
財団全国AEDマップ(日本救急医療財団 全国AEDマップ) を使うと、住所や施設の種類など、さまざまな条件からAEDの設置場所を検索できるので、皆さんもぜひ近所の設置場所をチェックしておいてくださいね。
最後に覚えておいてほしいこととして、

  1. 倒れている人がいたら声をかける
  2. 反応がなかったら周りの大人に助けを頼む
  3. AEDの場所を確認しておく
  4. 助けるときは自分の安全を確保する

の4つを教えていただき、すべて終了。お疲れ様でした!

講習の終了後、児童に感想を聞くと、「難しかった」「実際にできるか不安」という声が聞かれました。端から見ていると積極的にうまくできていたようでも、やっぱり不安はあるみたいですね。今回は9名だけの体験でしたので、先生も「できれば全員に体験させたかった」と少し残念そうでした。
やはり実際に体験することは大切です。今後もこういう機会を設けて啓発を続けていくことが重要なんだと改めて感じました。

ここにも注目! ~ こんなこともありました ~呼吸が戻った! 
でもまだ気を抜かないで次の処置を!

AEDの使い方がわかったら、「回復体位」も覚えておこう!

「回復体位」イメージ

呼吸が回復したときにとるべき「回復体位」。嘔吐物による窒息を防ぐために体を横にする

3組目の実演で登場した「回復体位」。当日は田中さんが実演してくださいました。

「回復体位」は、呼吸があるけれど、意識はまだ回復していないときにとらせる姿勢。これには、せっかく呼吸が戻っても、無意識に吐いてしまった場合、嘔吐物がのどに詰まって窒息するのを防ぐ意味があります。 もちろん、意識が戻っていたら、その人が楽な姿勢にしてあげればいいのですが、そうでない場合は以下のようにします。

  1. 下になる側の腕をまっすぐ伸ばし、傷病者を横向きに寝かせる
  2. 倒れてしまわないよう、上側の膝を90度に曲げて前に出す
  3. 上側の手を枕代わりにあごの下に入れ、気道を確保する

いざというときのために、こちらもぜひ覚えておきたいですね。 もちろん、このときもAEDのパッドは付けたまま、電源は入れたままにして、救急隊の到着を待つことを忘れないでください。

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