キヤノンシステムアンドサポートが、たった2カ月でAED導入を成功させた秘訣は?
キヤノンシステムアンドサポート(以下、キヤノンS&S)様では、主要な支社だけでなく、少人数で営業する地方の事務所に至るまで、すべての拠点にAEDを導入することにしたという。約5000人もの社員を抱えながら、スムーズに導入を進めた同社に、成功の秘訣を伺った。
「社員の安全確保」と「社会貢献」の両立を目指す
AED導入が社員の意識改革の契機に
代表取締役社長
平賀 剛 様
まずは、AEDを全社導入されるに至った経緯をお聞かせいただけますか?
2018年1月にキヤノンS&Sの社長に就任した際、全国の拠点を見て回ることを決め、2019年に入って支社だけでなく、地域の営業所も回りました。そのときに感じたのが、ほとんどの支社にはAEDが配備されていたにもかかわらず、地方の営業所にはAEDがないじゃないか、ということです。とくに、そうした営業所は駅前とは離れた場所にあることが多く、いざというときに救命活動が間に合わないのでは、という危惧がありました。そこで、まずは全社員の安全を確保すべく、地域格差をなくすために、全社でのAED導入を決定しました。
「全社で」となると、大変だったのではないでしょうか?
規模の大小にかかわらず、全国約170あるすべての拠点にAEDを導入することにしたので、実際に現場で担当した社員は大変だったと思います。しかし、AEDを取り扱う企業として自社で導入していないとお客さまにご提案しにくいのではないかという思いがありました。なにより全国に約5000人いる社員の安全を確保するとともに、その家族を含めてAEDについての知見を深めていくことは、大きな社会貢献になると思い、導入を進めることとしました。社会貢献という意味では、地域の方が24時間誰でも使えるよう、試験的に屋外にAEDを設置したところや、昼間不在となってしまう拠点については社有車に搭載したケースもあります。
実際に導入されてみていかがでしたでしょうか?
社員の救急救命に対する意識の高まりを感じています。AED導入を機に救急救命のセミナーに自主参加するなど、いざというときの心構えなどを身に付けることで、社会貢献の面でも意義のあるものになったと思っています。
具体的にはどのようなことでしょうか?
たとえば、目の前で倒れた方がいても、まず何をすればいいのか、知識がなければ動くことすらできないでしょう。こうした場面に遭遇した場合、心臓マッサージを行う人、救急車を呼ぶ人、AEDを取りに行く人といった役割が必要であること、そして周囲の人に協力を依頼し、それらの役割を早く実行に移すことがいかに大事かという知識があれば、即座に行動することができ、救命率の向上につながると思います。全国に散らばる社員約5000人とその家族にそうした救急救命への理解やAEDの知識があれば、より多くの方を救えるようになるはずです。
なるほど、確かに機器だけ導入しても使えなければ意味がありませんね。とはいえ、約5000人の社員様に教育となると、なかなか難しい面があるのではないでしょうか?
もちろん、それだけの人数に講習を受けてもらうのはかなり大変なことですが、救急現場で実践できるのかどうかが重要ということに異論の余地はないでしょう。そこで、全社員にAEDを使った心肺蘇生(CPR)講習を受けるように決めました。9月から始めて10月下旬の段階で、すでに90%近くの社員が受講を完了しています。11月末を目標に、遅くとも年内には100%を達成するのではないでしょうか。
そのスピード感は素晴らしいですね。そうしたAEDの取り組みを通じて、御社として描かれている将来像はありますか?
弊社では、現在約500名の社内資格の認定インストラクターがおり、お客様向けにCPR講習を実施しています。このお客様向け講習はグループで2010年から実施しており、これまでに約18万人の方(2019年10月現在)に受講いただきましたが、これを推し進め、「2020年までに受講者20万人を達成しよう」ということを目標に掲げています。この機運を高めるためにキヤノンS&Sではこのようなバッジ(写真)を社員全員が付けるようにしています。